巡回指導に同行
なぜ「群馬の地酒」は年々、進化を遂げているのか?
これほどまでレベルアップしているのか?
新聞などの取材で、よくいただく質問です。
「群馬の地酒の蔵元の皆さんの関係性が良く、お互いに情報共有、切磋琢磨しながら群馬全体のレベルアップに取り組んでいる」「その中核をなす人物が、聖徳銘醸、群馬県酒造組合技術委員長の西岡さんだ」とお話しています。
巡回指導とは、酒造技術の専門家が酒蔵を訪問して各蔵が抱える課題点について指導を行うもので、国税庁関東信越国税局や群馬県産業技術センターなどでも行っています。
加えて、群馬県では、西岡さんによる巡回指導が行われているということで、今回、同行させていただきました。
全国新酒鑑評会への出品に向けて
この巡回指導は、毎年この時期。全国新酒鑑評会の金賞受賞を目指して、各蔵で出品酒の醸造を行っているタイミングになります。
町田酒造店の町田晶也さんが旗振り役として各連絡調整され、毎年2日間の日程で実施され、15年近くになるそうです。
私も、町田さんの運転する車に乗せていただき、西岡さんと一緒に3蔵の巡回指導に同行させていただきました。
この日は町田酒造店の巡回指導はなく、町田さんは運転手役。
西岡さんも町田さんも特に指導蔵からお金をもらっているわけではなく無償。
15年も継続されて取り組んでいること、本当にすごいことだと思います。
まず1蔵目の長野原町の浅間酒造に到着すると、お米を蒸している湯気が立ち上がっていました。
出品酒用の醪(もろみ)の経過データを記載した情報と、実際の醪の様子を確認しての指導です。
蔵元の櫻井さん、そして、蔵人が今現在、気になっていることなどを、西岡さんに質問をぶつけ、御意見いただいていました。
現在の課題に対して、考え得る原因、対応策は何なのか。「これはやっているか?」「この作業はどんな手順で行っているのか」など、いろいろな可能性を模索しながら、今後の取組を探るやり取り。
櫻井さんにお話を伺うと「蔵の中で行っている判断に対して、西岡さんから積み重ねられた経験に基づかれたアドバイスをいただけるのは、とてもありがたい」「自分たちの判断、選択を確認することができ、これからの工程に向けて取り組むべき方向性が見えてきた」とおっしゃっていました。
早朝に出発して9時くらいに蔵に着いたのですが、終わる頃には昼近くになっていました。
2蔵目は、貴娘酒造へ。
貴娘酒造でも同様に、醪の経過状況の報告、現在、蔵元の吉田さんが課題と考えていることについて、西岡さんからアドバイスをいただいていました。
様々なデータを記録し、その蓄積の上に酒造りが行われているのだと思い知らされます。
工程もひとつの解があるわけではなく、日々の経過のデータを見ながらの判断。
一歩でも判断を見誤ると大きく結果が変わってしまうような緊迫感です。
いつ搾ろうか、残り日数で、どのようにしていこうか、判断が迫られるこのタイミングで、西岡さんが蔵にいらして、一緒に考えてくれる、アドバイスいただける
これは各蔵にとって、大変ありがたいことなのだなと感じました。
醪の様子も確認し、少し追水をしようということになり、吉田さんは即、判断して、その場で追水。
追水の仕方についても、西岡さんは丁寧に御指導されていました。
吉田さんも同行することになり、本日最後の訪問先、永井本家へ。
若手蔵元の永井悠介さん。
2蔵と同様に、醪の経過説明、そして、現地で醪の様子を確認します。
永井本家さんでも、西岡さんから様々な角度から作業工程について確度などを確認。
日々、蔵にいるというわけにはいかないため、これまでの作業について、細かく「この作業はどのように行っているか」「水質についてはどうなっているか」など、酒造りを究めるための道程について、西岡さんは各蔵の状況から推測して質問していきます。
順調な経過が確認でき、何とか最後まで良い状態をキープして永井本家さんにも全国新酒鑑評会でも金賞を取ってもらいたい。
その想いが、西岡さんからも、同行した町田さん、吉田さんからも感じられ、永井悠介さん自らが質問して聞き出す以上の情報、これからの工程に向けての注意点など、多くのアドバイスがありました。
西岡さんも「来週あたり、雪が降らず天気が良ければ、またツーリングがてら見に来ようかな」とおっしゃる。(翌週、本当に蔵にいらっしゃったそうです!)
群馬県内で酒造りを行っている者同士の無償の酒造りへの愛。
自分の蔵だけでなく「群馬の地酒」全体のレベルアップに向けて時間をかけた取組。
本当に、本当に、信じられないくらいスゴイです。
永井本家を出る頃には、外は暗くなっていました。
終わりに
帰りの車で、西岡さんから今日の訪問を含め、酒造りについて伺いました。
今年は、米の状況も厳しく、天候も不安定。そんな中で各蔵、良い酒を造ろうと頑張っている様子が垣間見れた。毎年毎年、状況が変わる中で、このような取組を行っていくこと、細かいところにも気を配って緻密にデータを取り分析する。この取組の連続が不確実な今後の酒造りの際に役立っていく。
そんなお話を伺いながら本日の巡回指導の同行が終了しました。
お二人は翌日も県内の蔵を訪問されます。
「県内の蔵元の関係性が良く、お互いに情報を共有して切磋琢磨している」
このような実際の場に同席させていただくと、この言葉以上の取組の重み、皆さんの覚悟が感じられます。
今期も群馬県が全国新酒鑑評会で良い結果になることを祈って、そして、全国の結果に関わらず、皆さんの酒造りに真摯に向き合う姿勢、取組を思って、引き続き「群馬の地酒」の素晴らしさを発信していきたいと思いました。
今日も「群馬の地酒」が旨い!!
ありがとうございました。
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